今後、MR活動ができなくなる

東京大学医学部附属病院は6月24日、慢性期慢性骨髄性白血病治療薬の臨床研究「SIGN研究」についての最終報告書をまとめました。

■「SIGN研究」の最終報告書
http://www.h.u-tokyo.ac.jp/oshirase/archives/20140624.html
報告書の中でショックを受けた一文がありました。それは、「販売促進行為を目的とした不適切な接触を防ぐため、入院病棟における病院教職員と事前にアポイントのないMRの入館は禁止した」という部分です。つまり、シェア・オブ・ボイス型の処方誘導・依頼は不適切だと指摘されたのです。ケアネットが2012年3月に発表した「MRディーリング活動に関する実態調査」結果によると、5年間(2006~2011年)で医師に会える割合が35%も減少していることが明らかにされましたが、今回のような不祥事をきっかけとして、今後ますます「医師に会えない」現象が拡大することが容易に予想できます。
 しかし、MRという職種が必要であることには変わりがありません。以前にセジデム・ストラテジックデータがAという製品を処方している医師に限定して調査したところ、次のような結果が出ました。
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  1. 平均でAを9人に処方している
  2. MRのディテーリングを受けた回数が1回以下の医師は、5人に処方している
  3. 2回以上ディテーリングを受けている医師は14人に処方している
  4. ディテーリングを2回以上受けた医師でも、説明会や講演会に参加していない場合は10人に処方している
  5. 逆に、説明会や講演会に参加している医師は21人に処方している

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つまり、ほとんどディテーリングを受けていない場合は5人の処方にとどまっていますが、MRからの説明を受け、講演会等にも出席すると、その数が21人にまで増えているのです。
 1、2回でお伝えしてきた環境の変化や、今回ご紹介したデータ等をみても明らかなのは、これからのMRは、「医師を中心とした医療人、そして患者に役立つ存在にならなければ、MR活動ができなくなる」ということです。
では、どうすれば良いのか?答えは、“原点に戻れ”がベストアンサーだと思います。私は10数年前に業界誌『Strategy』の編集長をしていたころ、連載をお願いしていた野崎稔先生(医療法人社団白百合会理事長)から医薬品マーケティングのあり方として、以下の6つを教えていただきました。

  1. 疾患の概念を普及し、市民に注意を喚起すること
  2. 疾患の正確な診断を支援すること
  3. 治療法に関する最新知識を普及すること
  4. 薬物治療に関するインフォームド・コンセントを支援すること
  5. 当該製品データ(有効性・安全性)の普及
  6. 疾患と治療に関する患者・家族への啓発活動

 MRの活動は1~6に付随するものでなければなりません。この医薬品マーケティングのあり方を踏まえ、MRを次のように定義したいと思います。
 「MRとは、医師に新たな処方習慣・治療戦略を提案し、医師だけでなく、他の医療従事者と患者・家族を含む全てのプレイヤーを幸せにする人」
 この定義を実現するためのシェア・オブ・マインド(SOM)チェックシートを最終回の記念として、プレゼントしたいと思います。ご愛読ありがとうございました。

【SOMチェックシート】©川越満
□1.先生のビジョンを知っている
□2.毎回、医師とラポールを築くことを心がけている
□3.毎週必ず「ありがとう」と言われている
□4.「自分の言葉」で話している
□5.相手が最近興味を持っていることを知っている
□6.医師と課題・悩みを共有している
□7.受けた質問について上司や同僚・部下とシェアしている
□8.なぜ、MRが必要なのか、自分の意見ではっきり言える
□9.広報誌・ホームページの内容について話し合ったことがある
□10.製品以外の話を先生からよくされる
□11.相手が、自分が「いつ」来るか知っている
□12.面談のときは、自分が話すのは3割以下にしている
□13.訪問時に「宿題」をもらって帰ることを心がけている
□14.医師が読んでいる本は、すぐにググって内容を確認する
□15.得意先主導の企画には“YES(前向き)な態度”を示している
□16.処方医以外とも情報交換している
□17.1コール当たり1万円(eの25倍)のコストがかかっていることを認識し、コスト以上の価値を提供するように心がけている
□18 .「自分の中」に【基準】を持っている
□19.医師をタイプ別に分類してコミュニケーションをとっている
□20.担当領域の学会+患者会の最新動向をキャッチしている
□21.なぜ、そのような質問をするのか?という潜在ニーズをつかんでいる
□22.相手のレベルによって、どのような質問が来るか予測できる
□23.相手の質問のレベルにより、いつまでに回答できるか即答できる
□24.海外のガイドライン等の情報を入手している
□25.自社製品が良いケースと他社製品が良いケースについて両方とも情報提供している
□26.自社製品のマイナス情報もちゃんと伝えている
□27.担当MRのなかで誰にも負けない得意分野を持っている
□28.事前準備に力を入れて、毎回、話す内容をアレンジしている
□29.講演会等には、次世代のリーダーに依頼するなど工夫している
□30.ターゲット医師のスケジュール・動線を把握している
□31.得意先の経営的な数値(科別)を把握している
□32.医師の研究分野等に対して支援している
□33.シェア・オブ・ディテーリング(SOD)に目標数値を持っている(※SOD:説明会・研究会・講演会・アポイント獲得)
□34.自社製品の安全管理上の問題について薬剤師等に確認している
□35.ガイドライン、エビデンス、症例について、しっかりと勉強・把握している
□36.医師等と情報交換するためのメーリングリストやSNSを持っている
□37 医師ごとに領域ごとの薬剤選択基準を把握している。つまり、相手に刺さるメッセージと刺さらないメッセージが分かる
□38 医師ごとの「重点品目」を知っている
□39 得意先が重視している「臨床指標」を把握している

kawagoe

コンサナリスト
川越満 セジデム・ストラテジックデータ株式会社

米国大学日本校を卒業後、ユート・ブレーンに所属。コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。とくに、MR向けの研修は受講者から圧倒的な支持を得ており、医薬品業界ではオピニオンリーダー的存在。主な著書に、『MRバブル崩壊時代に勝ち残る“7つの眼”』、『最新<業界の常識>よくわかる医療業界』など。マスコミ掲載では、『毎日就職ナビ2010』、『エコノミスト』、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』などがある。