医師と逆になっている思考プロセスを改めよう

この連載は、全3回にわたって1年目から3年目までのMRが、知っておくべき&身につけておくべきマインドとスキルについてご紹介していきます。

まず、若手MRには、「不都合な真実」についてお伝えしなければなりません。1つめの不都合な真実は、MR教育は、2006年版の『MR研修テキスト』の1ページ目に書かれているように、“ミニマムリクワイアメント”(必要最低限)がベースになっていることです。そのため、得意先の十人十色、一人十色のニーズに応えるには、会社の研修だけでは不十分になります。

もう一つの不都合な真実は、「部下指導の衰退」です。昨今は所長の業務が忙しくなり、部下育成の優先順位が下がっているような気がしてなりません。現に、「自分がMR時代に所長に教えてもらったことを、今の部下に伝えていない」。拙著『ドクターは、そう考えないよ』に書かれている内容について、「昔、上司によく言われていたことです」という声を多くの所長から聞きました。だからと言って、部下指導の“文化”の断絶の責任を所長に負わせるのは酷です。医薬品業界全体が、シェア・オブ・ボイス(処方依頼中心のMR活動。医師へのコール数・ディテール数を競っている世界)に走ったため、各企業の“文化”が衰退してしまったのですから。

「ミニマムリクワイアメントの教育」と「部下指導の衰退」という2つの不都合な真実が突きつける問題点は、自己研鑽を怠ると、得意先のニーズに応えることが、ほとんどないまま年をとってしまうということです。

3d

元JAXA職員の中川人司さんは著書『宇宙授業』の中で、「自分の近くの地面だけを見て生活しているアリにとって、地球は平面(二次元)だけれども、この世界は三次元空間である。自分の身の回りの地面だけを見ていると、アリのように三次元空間の住民でも二次元しか見えていない」と述べています。“ミニマムリクワイアメント”はまさに二次元の世界です。ぜひ、三次元の世界に手を伸ばしてほしいと思います。

自分が三次元の世界でMR活動をしているか否かの判断基準は、「勉強すればするほど、知らないことが増える」状態かどうかということに尽きます。学びというのは、まるで宇宙を彷徨うようなものです。新しいことを学ぶと、新しい世界への扉が開きます。開かれた世界は、これまで生きてきた世界より、はるかに大きなものになります。

前置きが長くなりましたが、3年目までに修得したいスキルの筆頭は、「医師の思考プロセスに合わせたコミュニケーション方法を習得する」ことです。6月27日にマザーズ上場予定のメドピアの石見陽社長(医師)は、以前行った講演の中で「医師は最後に薬だが、MRは最初に薬の話から入る。勝手口からいきなり入られるイメージだ。医師は、患者さんの検査値の変化に痺れるような経験をしている。その経験を共有するShare of Experienceの意識を持ってほしい」と、MRにエールを送りました。

医師は、対面→問診→診察→鑑別診断→検査・画像→結果判断→診断→方針選択の後に、初めて投薬というプロセスに入ります。各プロセスには、患者さんに対する説明が入るため、投薬への道はそれだけ長いものになります。

このプロセスを理解してMR活動をしないと、医師の「So what?」(だから何だよ?)という認識の壁を破ることはできません。医師の思考プロセスを理解し、「Why so?」(なんで俺にその話をしようと思ったの?)ということが、しっかりと医師に伝わるようにディテーリングする必要があります。

Why so?を意識したディテーリングを若いうちにできるようになれば、あなたのクオリティ・オブ・MRライフは、必ず向上していきます。

kawagoe

コンサナリスト
川越満 セジデム・ストラテジックデータ株式会社

米国大学日本校を卒業後、ユート・ブレーンに所属。コンサルタントとジャーナリストの両面を兼ね備える「コンサナリスト」(商標登録済)として、講演活動、書籍の出版プロデュースなどで活躍中。とくに、MR向けの研修は受講者から圧倒的な支持を得ており、医薬品業界ではオピニオンリーダー的存在。主な著書に、『MRバブル崩壊時代に勝ち残る“7つの眼”』、『最新<業界の常識>よくわかる医療業界』など。マスコミ掲載では、『毎日就職ナビ2010』、『エコノミスト』、朝日新聞夕刊の『凄腕つとめにん』などがある。